ゲーテ

、、、ドイツ人が自分達の詩聖へと祀り上げた大ブルジョアゲーテ、俗物ゲーテ、哲学的ノヂシャ(サラダ菜)を手に昆虫とアフォリズムを採集するゲーテである。そう私がガンベッティにいったとき、彼はもちろん「ノヂシャ」のなんたるかを理解できなかったので、私は説明しなければならなかった。哲学的小市民ゲーテ、人生の日和見主義者ゲーテだ。ゲーテについてマリアはいつも、彼は世界を倒立させた男ではなく、ドイツのシュレーバー菜園に頭を突っ込んだだけの視野狭窄の男だと言っていた。岩石に番号を振る男、占星術師、ドイツ人おかかえの幼稚な哲学的指しゃぶり、そしてドイツ人の万能ガラス瓶を魂のジャムで満たした男ゲーテ。ドイツ人のために自明の理を本にまとめ、それを至高の精神財と称してコッタ書店を通じて売りに出し、上級教諭を通してドイツ人の耳の中に塗りたくらせ、ついには耳の穴をふさがせてしまった男ゲーテ。ドイツ精神を少なくとも数世紀にわたって裏切り、私がガンベッティにゲーテ的勤勉さといって教えている勤勉さでもって、ドイツ精神をドイツ的凡庸さに切り締てしまった男ゲーテ。私が前回ガンベッティに対して言った言い方を用いるなら哲学的鼠取り男であるゲーテゲーテとは実用的ドイツ人だ、と私はガンベッティに言った。ドイツ人達は、まるで薬のようにゲーテを服用し、その効果と治癒力を信じている。ゲーテは実のところ、ドイツ人の無免許医師以外のなにものでもなかった、と私はガンベッティに言った。ドイツ唯一の精神科ホメオパチー医だ。ドイツ人はゲーテを服用して、健康になる。全ドイツ国民がゲーテを服用し、健康になったと感じるのだ。しかしゲーテは、と私はガンベッティに言った、無免許医師がぺてん師であるのと同様、ペテン師なのだ。そしてゲーテの詩と哲学はドイツ最大のぺてんなのだ。